手作りバレンタインを克服した《後篇》

そういうわけで、今年のバレンタインは手作りにすることに。

お熱な男性が居るとかいうわけではなく、
昔はうきうきした気持ちで迎えていたバレンタインを
もう一度取り戻したかったのです。

とは言ってもあの時のパウンドケーキをいきなり作るのもなぁ
と考えながら向かったのは無印良品。
この時期になるとバレンタイン手作りキットが商品棚に沢山並ぶのです。

リハビリとしては最高の品。チョコクランチのキット。
これだったらお菓子作りしたことの無い小さな子供だって作れる。



でもこれじゃあの時の自分とタカハシ君とブロック塀のカケラへの
鎮魂歌(レクイエム)にはならないんですよね。

じゃあ こっちだったらいいかな。レベルも中級だし



失敗したら、今度は迷わず捨てよう。の気持ちでレジへ。
その足でスーパーへ行き、必要なものを買って、
手作りバレンタインはっじまっるよー!!!!!!





材料はこんなもの。牛乳撮り忘れたけど。
ふるいにかける手間がないなんて…もう来年からずっと無印でいいよ。
少なくともベーキングパウダーでトラウマを作る事もなさそうだ今年は。
ところでベーキングパウダーって何?
アラバスタ王国が戦争になったきっかけのやつ?だっけ???



湯せんにかけてチョコをひたすらに溶かす。なんかバレンタインっぽいねぇ〜いいね〜

あと一番の心配であった、『常温にもどしておいたバターをクリーム状にする』
っていう工程で、もどしが甘くてLevel8くらいの失敗をしたのですが、
何とかごまかしてもたつきながら次の工程へ。



バターに牛乳や卵を入れてまぜ、キットにあったケーキミックスみたいなのを投入。
優しく、そう優しく砕いたくるみもファサーて投入。
なにこれ私今最高に二次元の女子高生みたいじゃね?
鼻にバターとか付けちゃおうかな?ドジっ子??ひゃっほう!!



『切るように』混ぜ合わせたケーキのもとをこれまたキットに入ってた型へ。
シンクに打ち付けるのとは対照的に、優しく机におとしながら空気を出す。

もう焼きの工程に入れるなんてさすがっす。無印さんマジかっけーっす。

飾り用のくるみをファサーで、170℃に温めておいたオーブンへ。


20分は、私に高校二年時のバレンタインを思い出させるには十分な時間でした。

あれ以降全く彼と会うことも連絡をとることもなくなり、
当然ちゃ当然ですがホワイトデーはレスポンス0でした。
もう会うことも無いだろうけど、タカハシ君に捧げます。今度こそケーキ。

とか思いながらも慎重な私は5分おきにケーキに竹串を刺し、
しっかりと通る事を確認。最悪生でもいいからせめて切れてくれ。



焼けた。焼けた!やったーー!!
串も刺さったし生じゃないーー!!
しかもなんかちょっと美味しそうだし!!履歴書の特技欄にお菓子作りって書こう!!
ただ慎重に確認しすぎて真ん中が怨みでもあんのかってくらいメッタ刺し。



クランチキットも買ってあって、前日に作りました。
やっべーーなにこれ超センスいいんですけどーー
ラルフジョーンズみたいな人に渡して『えっ俺にくれんの!?』なんつって
照れてギャラクティカファントムで胸に飛びこんでくればいいのに。死ぬけど。


いやー久々のお菓子作り、非常に楽しかったです。
来年からはまた手作りにしよう。なんか作った方が参加してる感あっていい。



あれ?こんなに大量に作ったはいいけど誰にあげんの?
JUGEM男子には別に用意してるもんなぁ
帰り道の都庁前あたりでバッタリ石原慎太郎に会ったりしないかな。



私が粗相をしても、いつもあったかい目で見てくれるお姉様方に渡しました。
来年度も酒の席ではなにとぞよろしくお願いします。

手作りバレンタインを克服した《前篇》

昔話をしていいですか。


高校2年の2月、バレンタイン目前の2年14組の空気はどこか浮ついていました。
私ははじめてバレンタインチョコを渡した時からそれまで手作りを欠かした事が無かったので、
当時好きだった1組のタカハシ君にも当然手作りのものを渡すつもりでした。
どちらかというと、人よりはお菓子を作ることには自信があったのです。

それまでのバレンタインは、チョコを溶かして型に入れたものやクッキーでした。
ただその時はHAWAIIAN6のCDを借りていた事もあり、お礼と淡い恋心を込めて、
ドライフ―ドのたくさん詰まったパウンドケーキを作ることにしたのです。

いつも通り台所に立ち、いつも通り卵とバターを常温にもどして、いつも通り、
いつも通りだったのです。小麦粉が30g足りないという事を除けば。
そして私が前衛的思考をもってそれをベーキングパウダーで補った事を除けば。

私はオーブンを開け、HAWAIIAN6のMAGICを口ずさみながら、
焼き具合を確かめる為にパウンドケーキに竹串を刺そうとしました。

竹串が折れました。

あれ?と思いもう一度パウンドケーキに竹串を刺し・・・折れました。

時間を置いてパウンドケーキに包丁を突き立て力を込めた途端、包丁が悲鳴を上げました。
これ、一軒家の周りを囲んでいるブロック塀のカケラじゃないのか?
動悸が激しくなりました。
私は何かに憑かれたように、シンクにブロックを思い切り叩きつけました。

必死に打開策を考えました。
これだけお金を使っておいて、捨てて作り直すのはもったいない。
かといってブロック塀のカケラを超本命のタカハシ君にあげるわけにはいかない。
でも、ぜひこの愛情のいっぱい詰まったブロック塀のカケラを食べてほしい。
愕然とした視線の先に、食器用スポンジがありました。これだ。

底が深めの丸い大皿に水を3cmほど注ぎました。
その真ん中にそっと、愛のカケラを置きました。
スポンジのように水を吸収すれば柔らかくなるはず、そう考えたのです。
健気に水に浸かり続けるのを見て、厳島神社の鳥居が頭をかすめました。

翌日、バレンタインデー当日の昼休み、
私は1階エレベーターホールの前にタカハシ君を呼び出して
借りていたCDと、今朝まで水につかっていたケーキっぽいものを渡しました。
「ありがとう」と、くしゃっとした照れた笑顔を見た時、
なんだか一気に恥ずかしくなってダッシュで逃げました。

その日の晩、受け取ってくれた時の笑顔が頭を離れずご飯がのどを通りませんでした。
すごく優しい人なのです。男の友達を大事にするし、女の子にも分け隔てなく優しい、
例えるなら君に届けの風早くんみたいな人なのです。
ちょっとした失敗はしたものの、それでも自分のお菓子作りの腕には自信があったので、
たぶん美味しいだろう。優しい彼ならきっと、美味しかったよありがとうって言ってくれる、
確信があったのです。

すると、メールが届きました。


「ごめんお世辞にも美味しいとは言えない」



私はそれ以来一貫してバレンタインは買いチョコ派に移行し、
HAWAIIAN6のMAGICに至っては相当なトラウマソングになってます。

ですが、このままだと君には一生届かない、伝わらないと思ったのです。
8年前、幕張の寒空に儚く散った淡い気持ちに区切りをつけるため
私は手作りバレンタインを再開する事を決めました。